歩きやすい靴ってなんだろう?
シャンクを含む靴の部品を知ることで靴選びが変わってきます
あなたにとって良い靴とはどんな靴なのでしょうか?という質問に『疲れにくい靴』や『履きやすい靴』という答えが多いかと思います。
これは単に靴や足からくる疲れやトラブルが多いことを示していると思います。
では『疲れにくい靴』『履きやすい靴』はどんな靴なのでしょう?
やわらかい、ヒールがない、軽い、ゆったり幅広の靴をイメージするのではないでしょうか?
スニーカーを除く靴、特にヒールがある靴は、かなり頑丈に作られています。
そして頑丈な靴は軽くはありませんし、やわらかくもありません。
踵には硬い芯材が入り、履き口も狭く少し窮屈に感じるかもしれません。
しかしこれらの靴の特徴には理由があり、シャンクを含めた靴部品や構造、体のことを知ることで、今後の靴選びの参考になればと思います。
正しいサイズを選ぶ
サルヴァトーレ・フェラガモ氏の言葉
足に合った靴を履いている足は年をとらない
足は若さと美しさを保つ
まず最初に重要なのは足長と足囲(サイズ)が正しく合っているか?です。
いくら良い靴を買ったとしてもサイズが合っていなければ意味がありません。
普段履いているサイズを頼りに試着なしに靴を購入するのも間違ったサイズ選びをする原因となります。
足長のサイズを目安に靴選びをする場合が一般的ですが、実は足囲も同じくらい重要なのです。
サイズの合わない靴は『足の匂いの原因』にも!?
サイズが緩い靴は履いた際に楽に感じますが、歩き続けると靴の中で足が動き疲労や靴擦れ、タコ(ベンチ)ができるなどの原因となります。
また靴の中で足が滑ると多量の汗が出て臭いの原因を引き起こすことになります。
逆に足に合う靴を履いて歩くと“ふいご現象”が起きます。
これによって靴の中の空気の循環が良くなるため、足の蒸れ防止に効果があります。
表示サイズだけで靴を選ぶのではなく、実際に履いてフィッティングを確かめることをお勧めいたします。
4つのフィッティングポイント
①足長(踵を合わせて、足指先が動かせる)
ビジネスシューズやドレスシューズには『捨て寸』と呼ばれるゆとりが設けられています。1cm〜2cm程度が目安です。履いた時につま先が靴に当たってしまうのはサイズが小さく、逆に前後に動いてしまうのはサイズが大きいことになります。足を踵に合わせて足の指先が動かせるくらいが良いサイズ感となります。
②足囲・足幅(ボールが靴にピッタリ当たっている)
足の親指の付け根と小指の付け根の外側の骨が出っ張っている部分がボールと呼ばれる部分です。この部分が余裕なく、靴に当たっていることが重要です。幅広でボールに余裕ができると靴の中で足が動いてしまいます。
③靴の履き口と足に隙間がない(指が入らないくらい)
靴の性能を発揮するのにも足の甲と靴とがピッタリあっている必要があります。履き口が足に食い込んでしまうようなら、サイズが小さいです。また、くるぶしと履き口が当たっていないことも確認。歩行時に擦れて靴擦れの原因となります。
④踵がしっかり収まっている
軽くつま先立ちしてみて踵が抜けずに足に沿ってついてくるようなら大丈夫です。踵が抜けてしまうと靴擦れの原因となります。またヒールや踵がぐらつかないかチェックしてください。
靴の部品と役割を知る
靴の部品と役割を知ることで靴選びが変わる
ここではシャンクと関連する靴資材を紹介します
靴は主要な材料として靴の表面を飾るアッパー部分(合成皮革・生地・革)とソール部分だけではなく、多くの部品と靴資材が組み合わされて作られています。アッパー部分が靴の顔であり皮膚であるとすれば、部品と靴資材は骨格や筋肉といった内部器官にあたり、目立たない存在であっても靴を形作る上で重要存在なのです。靴資材はお互いに支え合ってその効果を発揮します。ここではシャンクの効果を発揮する上で関係が深い3つの靴資材(ヒール・カウンター・中底)を紹介いたします。靴資材の本来の役割や効果、そして目的を知ることで、良い靴は何か?足にとって良いことが見えてくるかと思います。あなたに合った靴選びのポイントが見つかるかもしれません。
足裏の体重バランスを整えるヒール
裸足で立つと踵に体重の60%がかかる
実はヒールがない裸足の状態で立つと足裏のにかかる体重(重量)バランスは前足部に40%、踵に60%かかっています。
ヒールがなく体重が踵に多くかかると疲労が早くなります。
足にかかる体重を足底の各部に分散し、平均化するための調整役としてヒールが使われています。
立ち仕事中心なら3cm
立ち仕事が中心の場合は3cm程度のヒールが良いとされています。X線学的研究により、この程度のヒールであっても扁平足の縦アーチを増加させる効果が証明されています。
またこの程度の高さのヒールであれば、体重が前足部へバランス過多にならず、 足の疲れも起こしにくいのです。
ヒール効果で歩行も楽に
また踵部分が上がることで前への重心移動が容易となります。
やや前足部に体重がかかることにより、足指もしっかり地面を捉え、足の蹴り出す力をしっかり地面に伝えるので、歩くときに用いる力が少なくてすみます。特に女性は足の筋力が男性よりも低いので、歩行時の助けとなるでしょう。
ハイヒールは疲れやすい?
用途に合わせたヒールの高さ選びが必要
ハイヒールはつま先より踵側が高く7cm以上ある靴を指します。
ハイヒールの一番の特徴として、『美脚に見える』や『足が長く見える』など履いた時の美しさとしての側面があります。
また日本人女性の平均身長を考慮すると、7cm程度のハイヒールが最もバランスがよく美脚効果もあると言われています。
ハイヒールを履いた際の足裏にかかる体重は踵ではなく、前足部に大きくかかります。
歩幅は小さくなり”ちょこちょこ”歩きのような状態になり、同じ距離を歩いても歩数が多くなってしまいます。
さらに筋肉が常に緊張した状態にあり、疲れやすい靴ということになります。
当然この高さの靴で足を支えるためには、剛性の高い強靭なシャンクが必要となります。
逆にフラットシューズ(ヒールがない靴)はどうでしょうか?
体重が踵に多くかかることで、立ち仕事や歩きの多い仕事には向いていません。一見楽そうに見えますが、疲れやすいのです。しかしながら、乗り物での移動が多い場合や持ち運びが必要な場合は、とても便利で快適な靴と言えます。
カウンター(月型芯)でぐらつき防止
踵をしっかりホールド 足の内側をサポート
靴の踵周辺部分に硬い芯材が入っています。
これをカウンター(月型芯)と言います。
このカウンターは、踵の保護、歩行の安定、靴の履き口の形状保持など多くの役割を担っています。
カウンターは、踵を包み込むように硬く形成されており、踵の側方から支えることで、踵の内外側への傾きを防ぐ機能を持っています。
また、踵が安定することで、歩行やスポーツ動作を安定させ、パフォーマンスを向上させる効果も期待できます。
逆に柔らかかったり、踏みつぶされたカウンターでは、靴の中で踵がぐらついてしまい、踵を安定させる効果を期待できません。
また踵の安定性が悪くなると怪我や痛みなどの原因となることもありますので注意が必要です。
靴を選ぶ際には指で挟んでもつぶれないような、丈夫で長いカウンターが入っているものをお勧めします。
カウンターがぐらつかないようにするためにも次に出てくる中底の存在は欠かせません。
シャンクのU部分は単なるデザインではありません
シャンクのUのような箇所は釘やネジが通るための場所なんです。
通すネジや釘の幅によって色々なサイズのUがあります。ちなみに当社ではマタと呼んでいます。
靴をまとめてくれる中底
硬い、やわらかい材質で靴に動きを与える
最後にご紹介するのは中底です。シャンクはこの中底の中に埋め込まれていたり、裏側に取り付けられています。
中底はアッパー部分をつなぐ接点であり、同時にカウンターもしっかりと固定されます。
さらにヒールを固定したり、ソールを貼ったりと靴のまとめ役のような存在です。
中底によっては『やわらかい』場所と『かたい』場所がはっきりと別れ2種類の素材を組み合わせたものがあります。
これにより靴は、固定したい場所はしっかりと固定し、曲げたい場所(ボール部分)は柔軟に曲げることができるのです。
また紙のような素材(パルプボード)で作られており、吸放湿性の効果で靴内のムレを防止します。
中底とシャンクとヒールを釘やネジでしっかり固定することにより、加重をしっかり支え、ねじれない靴が生まれるのです。
良い靴は良い部品から
靴選びをするとき
シャンクが入った靴も選択肢に入れてください
靴は様々な部品が支え合う形で成り立っていることをご理解いただけたかと思います。また靴の部品の一つ一つが、皆様が正しい一歩を踏み出せる役割を果たしています。本当に良い靴とは良い部品からできております。シャンクは用途や種類によって、入ってる靴も入っていない靴もあります。ですのでシャンクが入っている靴が良い靴というわけではありません。今後の靴選びの際にはシャンクが入った靴も選択肢に入れていただけたら幸いです。
それではシャンクがどのようにして作られるかをご紹介いたします。
当社ではシャンクは一貫生産(一つの会社で商品生産が完結・完成)しており、徹底した品質管理と迅速な納品を実現しています。